ラスト・ラン 〜僕らの光〜
「青柳さん。前田君って今日お休みなの?」
斗真も訊こうとしていたことを江原先生が問う。
ふいに青柳の表情が曇った。
「それが連絡がつかなくて。土曜日用事があるっていって別れたっきりで、私てっきりまた友達の家に上がり込んでるんだろうと思ってたんだけど。今朝おばさんから電話がかかってきてまだ家に帰ってないみたいなんです」
「そうなの?」斗真は驚いた。
「でも中学の時だったかな。前にもこういうことが一回あったから…。その時は友達の家に一週間ぐらい泊まってみたいで。学校も無断で休んでたの。だからしばらくは様子を見ようってことで今連絡待ってるところなの」
「なるほど…」
「隼平のことだからきっと何もなかった顔をしてすぐ帰ってくると思うけど」
「でも珍しいな。大会だって近いだろ」
前田は来月、県外で開催される全国高校陸上競技大会の出場が決まっていた。
スポーツ推薦を狙っている前田にとってこの大会で良い成績を残す必要がある。
「そうなんだよね。今年も優勝するってはりきってたのに…」
二人でため息を吐いていると、江原先生が温かいコーヒーを用意してくれた。
「先生の方でも探してみるから。三浦君も青柳さんも前田君のこと心配しないで待ってなさい」