ラスト・ラン 〜僕らの光〜
サイクリングロードを夕日の光が優しく照らす。橙色に染まった道をしばらく歩くと、やがて川が見える。

前田と別れたあの日の翌日、台風が近づいていたこともあり、それまでの晴天と打って変わったように激しい雨が降っていた。

濁流と化したこの川は河川敷を水浸しにし、そして前田をも飲み込んだ。

警察に捜索願が出された後、彼の遺体が川に浮かんでいるところを近所の人に発見され、今その現場の周辺にはたくさんの花やお菓子、それから陸上部のユニフォームが供えられている。



どうして前田はこんなところにいたのだろう。

風雨が激しくなると、この河川に近づく人はない。

濁流に巻き込まれて命を落とす危険性があるからだ。
ここの近所ならば誰もが知っている。



まさかあんな雨の日に走っていたんじゃないだろうな。

いくらなんでも前田はそこまで馬鹿じゃないだろう。


しかし警察も学校も前田が毎日ここのサイクリングロードで陸上の練習をしていたことを知ると、全員揃って納得していた。

そうして前田は誤って川に転落してしまったのだろうと水難事故として片付けられた。
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