ラスト・ラン 〜僕らの光〜
「来週、離婚届を出そうと思う。母さんとよく話し合って決めたことだ。斗真も分かってくれるよな」
拳を握る手が震えている。
前田や青柳のこともあり、ただでさえ苛立ちが募っているというのに二人の身勝手な行動に嫌気が差した。
もちろん離婚は斗真も望んでいたことだった。
しかしこれはあくまでも家族の問題で斗真も関係しているはずだ。
二人で勝手に結論を出して、しかも母が最後に自分と顔を合わせないで出ていったことに無性に腹が立った。
離婚の原因は大半は、母にある。
どうせ息子に合わせる顔がないと思って逃げたのだろう。
それでも、一言でもいいから、謝ってほしかった。
母の口から直接、謝罪の言葉が聞きたかった。
「それで、父さんは斗真と一緒に暮らしたいんだが。斗真はどう──」
「──もいいよ」
斗真は父の話を遮るようにいった。
「もう今更どうでもいいよ。二人の勝手にしたらいい」
父の顔が引きつる。
呼び止める声を無視して、斗真はリビングを後にした。