ラスト・ラン 〜僕らの光〜
青柳は何も聞かなかった。

斗真も前田のことで塞ぎ込んでいる彼女を今は心配させたくなかった。

ただずっとこうして、彼女がそばにいてくれただけで、それだけで癒された。


「三浦君」


ふいに、彼女が口を開く。


「前に星を手に入れたことがあるって話したじゃない?」

「ああ、あまーい星?」

「そう。あまーい星」

「結局その星は本当にあったの?」


少しの間を空けて彼女はいった。「こんぺいとうのことよ」


「隼平がくれたの。本物の星が手に入らなくて落ち込んでいた私に、その代わりにってたくさんのこんぺいとうをくれた。子どもだましだけど私はすごく嬉しかったの」


ちくり、と胸が痛んだ。「そう…」
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