ラスト・ラン 〜僕らの光〜



前田が死んだことだってそうだ。



青柳がお守りを失くしたことを知り、カフェで俺たちと別れた後、その足でずっと探し回っていたらしい。それも一晩中だというから驚いた。

翌日雨が降り、そこで止めるべきだったのに、この雨で流されてしまわないかと心配になった前田は急いで青柳の通学路でもあるサイクリングロードに向かった。

そして川沿いの途中で雷に反射して何かが光ったのを発見した前田は、それを拾おうとして誤って足を滑らせてしまい、川に流されてしまった。


たかが、こんぺいとう。

新しく瓶を買って詰めればいいのに。



きっと誰もが口を揃えていうだろう。

俺もだ。


そんなことのためにあの悪天候の中を川に向かうなんて自殺行為に等しい。



でも前田は後悔していなかった。


──あれは凛子にとっても俺にとっても世界に一個しかない大切なものなんだよ。何にも変えられないんだ。


川に流されて命を失ってからも、前田はそのお守りを握りしめていた。
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