ラスト・ラン 〜僕らの光〜
「おい、三浦」
突然、前田が血相を変えて窓の外を指差した。
「あれ、凛子じゃねえか」
えっ、と思わず斗真も視線を追う。
グラウンドではちょうど陸上部が朝練を終え片付けをしているところで、その様子をじっと見つめている青柳の姿があった。
やがてグラウンドを離れ昇降口に向かう彼女と目が合い、どのような顔をすればいいのだろうと戸惑っていると、彼女は手招きをして口をゆっくりと動かした。
し、た、に、お、り、て、き、て。
ここまで来たということは、青柳はあの川を渡れたのだろうか。
「凛子も凛子なりに乗り越えようと必死なのかもな」
階段を降りる途中、前田がぽつりと呟いた。
安心したような、それでいてどこかもの悲しそうに、二つの感情が組み合わさった複雑な表情だった。