ラスト・ラン 〜僕らの光〜
「"いや怖いもの見たさっていうかさ。台風で雨がすごかったからどのくらいの波の高さになってるか興味本位で川見に行ったんだよ"」
「何よそれ。あの川はこの季節になると水難事故も多いし、危険だって教わらなかった?」
「"男はいつだって危険がつきものなんだよ"」
「はあ、訳分からない」
「"女のお前には一生分からないだろうな"」
「本当に馬鹿みたい」
「"まあ要は自業自得ってことだ"」
「よく分かってるじゃない。そこまで分かっててどうして──」
「"もう終わったことだ。とにかくそういう理由だから事故は凛子のせいじゃない。それだけ伝えたかったんだ"」
「…」
「"それとあと一つ"」
「何?」
「"もう俺のことは忘れろ"」
「…忘れろって、どうして」
「"どうしてって俺はもうここに存在しないんだ。凛子はこれからずっと一人で生きていかなきゃならないんだよ。いつまでもメソメソするな"」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない。勝手なこと言わないでよ」
「"凜子"」
「忘れられるわけないよ…」
「"もう辛いんだよ。お前の泣き顔を見るのは"」
「…」
「"お願いだから俺の気持ちも分かってくれ"」
「隼平…」