孤独の海
すてたもの
ある日、青黒い大きなおおきな海に、僕は捨てた。小さな小さな試験管を。



その中に“何か”を入れた記憶はあるが、何を入れたのかを、どうしても思い出せない。
もしかしたら、最初から何も入れていなかったのかもしれない。

―そうか、僕の思い過ごしか―

小さな透明ガラスは世界を歪ませ、“そこ”を僕の眼に写していた。

―僕はこんなにも歪んだ世界に生きていたのか―

その瞬間、世界の全てが嫌悪の対象に感じられた。



吐気がする。この世の醜悪さに。



めまいがする。塗りたくられた色彩の不協和音に。



耳鳴りがする。無意味な全ての雑音に。



頭痛がする。無駄に造り出された情報の多さに―




海には沢山の海鳥が飛んでいた。白い群衆の中に、黒いものがいた。
僕を見ていたのか、黒い彼は嘲笑っている。

「無様だな。世界に翻弄されて。」

僕は何も言えなかった。

「弱いな。自分を正当化したいだけじゃないか。」

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