孤独の海
僕は仕方ないと思った。所詮、弱い人間だから。
プカプカと無気力な海月のように、海に浮かぶソレはまるで、孤独な僕のように思えた。
黒い鴉が嘲笑う。

「一人では何も出来ないんだな。」


「お前だって一人じゃないか。何も出来ないんだろう。」

僕は初めて言葉を交わす。
「俺は“独り”なんじゃない。“一人”を選択したのさ。」

鴉は一人でいることで強さを得た。
僕は独りでいることで孤独と弱さを得たのだ。

僕は独りで青黒の深海へと沈み逝く為に、此処に居るのだ。
けれど、所詮そんなことできはしない。彼にそれを見透かされたことが恥ずかしくなった。


その時、深い孤独を感じた。いつしか鴉はいなくなっていた。

そうか、あの小さな小さな試験管に、僕は僕を詰めて捨てたのだった。
ようやく分かった。


僕は試験管に詰まった僕を求めて静かに墜ちた―。




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