鏡の中の少女


「はぁ~その辺の娘さんなんて目じゃない位…」 「…………似合うな」


週末……アノ後、藤堂さんと色々話す中で今回の“浴衣”の事を話してみた。私としては、面目を潰すからちゃんと断ろう
と思って話したのだけど……心配とは裏腹に 笑われて私には意味も判らず藤堂さんを見ると、凄く優しくて穏やかになる笑顔でいた。

そして昨日…藤堂さんが 浴衣を持って店にやってきたのだ。あの後に、準備してくれたらしいが…私には高価な物と判っていたから受け取れないと断ると、オーナーが折角だから店をあげて“花火大会”をしようと言いだしたのだ。


当日、私はお客の一人中村 幸子(なかむら さちこ)おばさんが着付けが得意だからと朝から2階で着付けやヘアメイクまでをして貰い一階の店では夜騒ぐための料理作りですでに賑やかだった。
藤堂さんは 夕方店にくる約束になっていたので、先に盛り上がっている一階へ…鏡の中の私は私じゃない誰か別人に思えたが、内心は言葉にならないくらい嬉しくて舞い上がっていた。

「翼、どうかな?」
「…うん、に、似合ってるよ……可愛すぎ…浴衣綺麗だよ?」
「でしょ?はぁ~飾ってある時から可愛い、綺麗って思っていたんだよ…私に着られて浴衣の方は、可哀相だけどね」
「あぁーあ、オーナーの孫のくせに…はぁ、ダメだわね…」


私は翼に、クルリと回って見せると褒められて嬉しく思っていたが…おばさんが、『やれやれ』と首を振ったし周りも笑ってて私は首を傾げた。

(何?…何で笑って…ムッ、良いわよ!浴衣に、負けている事くらい自覚済みだもんねぇ~)

内心アッカンベーと舌を出しながらも、嬉しくて余り気にもしていなくて…集まっていた常連さん達と写真を撮ったりして盛り上がっていた。


(藤堂さんに早く見せたいな…喜んでくれるよね?)

チラリと、時計をみながら…夕方になるのを待っていた。


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