初恋
「と、俊哉お兄ちゃん。そのオムライスなんだけどね」
 どうしよう。正直に本当のことを言うべきか。それとも落胆させないように嘘をついた方が良いのか。ここが思案のしどころだ。
 俊哉と優奈の両親はある日を境に二人の前から姿を消した。それからというもの、高校に通い、バイトをしながら、一人で優奈を育てている俊哉である。親が残していった通帳のお金があるとはいえ、彼もまた高校一年の時に、幼い妹と二人だけ残された。それでも頑張ってここまでやってきたのだ。本当のことを知ったからとて、オムライスの味ぐらいで落ち込んだりしないだろう。それに、他人はともかく、兄にだけは嘘をつきたくない。
「味なんだけどね」
「うん」
「ちょっと濃い。ってか、苦いかも。これって・・・・・・」
 言い掛けて優奈は後悔した。俊哉がうなだれているのだ。
「俊哉お兄ちゃん・・・・・・あの・・・」
「やっぱりまた駄目だぁ」
 俊哉はため息をついた。
「どうも料理だけは苦手っつーか」
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop