-呪歌-
咄嗟に晴海は声のした方角、暗闇が口を開けている木々の間を振り返った。
そこには小学校に入るか入らないかくらいの女の子が立っていた。
しかし、その姿は尋常とはかけ離れたものだった。
背中の半分くらいまで伸びた長い髪。
笑い続けるその口の中には、赤い液体が溢れ返りダラダラとこぼれ落ちている。
まばたきもせず、晴海を見つめるその目は、濁って赤黒く変色している。
『・・・こ、声が出ない!!!』
晴海は悲鳴を上げることもできないまま、身動きがとれないでいる。
すると女の子は数歩晴海に近づき歌を歌い出した。
♪とうさーんもうすーぐかえってくるわー
かーあさんそーういったー
まーだかなーまーだかなー
どーあをあけてーにーこにーこえがお
どーあをあけてーおーにおーめん
こーのことーわたしのーままははーはー
おーかおもーおふくーもまっかっかー
だーれがこーろしーた
だーれがこーろしーた
じゃーあーこーのこーを
うーめたーのはーだぁれー♪
『何・・・?今の歌は・・・?』
歌い終えた女の子の霊は、再び暗闇へと立ち消えて行った。