-呪歌-



いや・・・違う・・・

これは殺人事件では・・・

犯人は生きた人間じゃないんだよ!


確信を持っている信二は心の中で叫んだが、たとえ警察に今までの事を話したところで信じてもらえるはずなどない。
晴海の無残な姿など、見るに耐えなかったが、ゆっくりと部屋の中に信二は足を進めた。


「・・・?」


血の池から伸びた、晴海の右手の辺りに、ある物を発見した。


「4」


流れ出した大量の血に漬かる瀬戸際に、血で書かれた文字。


腹を引き裂かれ、死の間際に晴海が書いた物に間違いない。


4・・・晴海・・・
一体何を俺達に伝えようとしてくれていたのだろう?



強そうに見えて、本当は凄くもろい所を持ち合わせ、さりげなく人を気遣う優しさを持っていた晴海。

そんなさりげない優しさに助けられ、時には力になりたいと思える。
そういう存在だった。


変わり果てた晴海の前で、昨日までの優しい晴海の笑顔を思い浮かべ、信二の頬からは涙がこぼれ落ちて止まなかった。

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