-呪歌-
陽子達の前に短大の校舎が見え始めた。
真由美の待つ部室に向う途中、後ろから声をかける者がいた。
「おーい今日子。
何で戻ってきたんだ?
お前今日バイトとかいってなかったっけ?」
髪を銀に染め、耳にはピアスをいくつも空けた見るからに威圧感のある男性が親しげに話しかける。
「そんなの今日はサボリよ!
超大事な用事が出来たのっ!
それより光一こそ練習終わったの?」
彼の名前は奥村光一。
聞くところによると、今日子の彼氏らしい。
今日子・・・こういう人が趣味だっけ?
彼の奇抜な風貌に驚きはしたが、彼はバンドのギターリストらしい。
ヴィジュアル系という、特殊な化粧や髪型、衣装で独特な世界観を持つジャンルの曲をやっているとの事・・・
「真由美んとこ行くなら俺も行く。
アイツの彼氏、電話に出やがらねぇ」
真由美の彼氏は光一のバンドのサイドギターを勤めている。
ルーズな性格で、今日も練習に来なかったようだ。
それ故、彼女である真由美に伝言を頼もうと思っているのだった。