-呪歌-
その時。ふと誰かが陽子の手を取った。
「大丈夫?」
武は優しく問いかけた。
「大丈夫、ありがとう」
武の方から手を握ってくれるなんて、予想もしていなかった陽子は、少し動揺しながらも、じわじわと溢れてくる喜びの感覚に酔いしれた。
石段は思ったより短く、月明かりを背に、黒くそびえ立つ鳥居が姿を現した。
鳥居をくぐると、石段と同じく古びた石畳が、奥の御堂へと続いている。
「御堂の中も覗いてみる?」
怖いもの知らずの美咲が振り返りながら言う。
「さすがにそれはヤバイでしょ?」
苦笑いを浮かべながら武が言った。
ふと晴海の方を振り返ると、青い顔をしてうつむいている。