-呪歌-

玄関で、軽く信二の母親に挨拶をして出かける。


急にシンとした部屋の中で、信二はため息をついた。
晴海・・・・・・



生前の、優く微笑んだ晴海の姿が脳裏に浮かぶ。


俺が武と喧嘩した時、さり気なく仲直りのきっかけを作ってくれたお前。

一年の終わりに単位を落としかけた時、徹夜でレポートに付きあってくれたのも晴海だったな・・・・


晴海は晴海で、何か困った事があると、それとなく俺に相談しに来てたな。


フフ・・・


周りには「付きあっちゃえよ」とか言われてたけど、俺もお前も、全然そんな感じじゃなかったのな。


お互い自然に、ただそこにいる存在。


恋愛感情とは違うけれど、一番必要とする人間だったなぁ・・・・


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