「うわ。もうこんな時間?そろそろ帰らないと、お母さんに怒られる」
「送ってく」
焦っている姿が、ハムスターみたいなナオはショウタ君と一緒に私たちに手を振って、お店から出て行こうとしていた。
 実は私もそろそろ帰らないといけないかも、なんて思っていた。
「じゃあ、わた…」
そこまで言って、私は言葉を飲み込んだ。
 店を出て行った先にあった、ナオとショウタ君の笑顔を見て、邪魔しちゃいけないって本能が言っている。
 どうしようかと、私はもんもんと悩んでいた。そろそろ帰らなきゃいけないけど、次の電車まで待った方がいいと思う。でも、もう今月ピンチだから何をしていよう。
「タク、ど~するか?2人とも、帰っちゃったし」
「お前は帰らねぇの?」
お前なんて言うな。ユイだ。
 なんて心の中で、突っ込みながら、困った様に笑う。
「2人の邪魔しちゃったら、悪いじゃん。次の電車まで待とうかな」
「ふ~ん」
なんか、急に2人にされると、何を話していいのかわからなくなる。
 でも、沈黙はまずいでしょ。
 慌てていると、私の目に、あるものが映った。
「クマちゃんだ!」
私の足は知らないうちに、UFOキャッチャーの方に向いていた。
 ガラス越しに見える、クマの人形の山。ちょうど私が集めている種類のクマちゃんだった。
「それ、欲しいのか?」
「もちろん!チョ~可愛くない!?」
いつのまに付いてきたのか、後ろにタクが立っていた。私の頭を上から押さえつけるように掴んで、ガラス越しのクマちゃんを見ていた。
 そして、おもむろにポケットに手を突っ込んだかと思うと、財布を取り出した。
「おっしゃ。試してみっか」
私を押しのけて前に出てきたタクは、100円入れた。
「どれがいい?」
「えっと、あの、ピンクの。ハットかぶってるやつ」
「すぐ取ってやる!」
と言って、タクはボタンを押すが、ピクリとも反応しない。
「動かねぇ?」
「壊れてるのかな?…あ」
私は、あることに気がついてしまった。それは、高校生のお財布には痛いこと。
「なんだ?」
「タク。これ、200円だよ」
「はぁ!?」

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