「ヒドいんだ~、ヒドいんだ~」
私はその場にしゃがみ込み、手で顔を覆う。お得意の泣いたふり作戦。
 突然しゃがみ込んだ私に、当然驚くタク。
 困ってる、困ってる。と、心の中で笑っている私。
「そんな、子供じゃないんだから、アイスぐらいで泣くなよな」
「タクは私の喜びを奪うんだ~」
だだっ子のように拗ねてみせる。
 タクは優しいから、騙されやすい。
「ママ~、アレなぁに?」
「しっ」
近くに通りかかった親子の声に、私は恥ずかしさを覚えた。
 タクで遊ぶのは楽しいけど、変な人に思われるのはごめんだ。
 タクも同じ考えらしく、声が焦っていた。
「わかった。アイス買ってやるから」
チャ~ンス!!
「嘘だよ~ん」
ニッコリ笑って顔をあげると、そこには困った顔をしたタクがいた…。いない。
 あれ?どこ行った?
 その場で360°回ってみたけど、見あたらない。
 もしかして、恥ずかしいあまりに私を置いて行っちゃった?
 それとも、迫真の演技を信じ切っちゃって、呆れちゃったのかな?
 もしかして、捨てられたの?捨て猫みたいに!
「タク!」
あまりにも恐くて、涙声になった。視界がぼやける。
 タクに嫌われちゃった。悪ふざけするんじゃなかった。
 ごめんなさい。お願いだから、嫌いにならないでよ。帰ってきてよ。
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