「お前、どうしたんだよ?学校までに来て。なんか、用事でもあんのかよ」
「用事ないと、会いに来ちゃいけないわけ?」
ああ、そうか。私、やきもち焼いてたんだ。
 私と違うタイプの子に、タクが盗られちゃうんじゃないかって。いっつも、用事がなくても会えて、私のしらないタクを知っているあの子に…。
「は?どうしたんだよ?」
「別に、どうもしてないよ」
「どうかしたから、こんなにぶっさいくな膨れっ面になってんだろ?」
おかしそうに、私の頬をつついてくる、いつものタクが、無性にイラッとさせる。
「ぶっさいくで悪かったわね!ど~せ私は、あの子みたいにキレーじゃないもん!」
「なんだよ?それ?」
「さっき、玄関で他の女の子と楽しそうに話してたの見たんだから!」
あぁ、言ってしまった。これは言ってはいけない。そうわかってるのに、言わずにはいられない。
 とんでもないことをしたとわかっているのに、口も感情もあふれ出す一方で、止まらない。
「他のヤツと話しちゃいけねぇのかよ。んなの、馬鹿馬鹿しい」
溜息混じりに、どうでも良さそうに言うタクが嫌なヤツに見えた。
「馬鹿馬鹿しい?私の気も知らないで!」
「おいおい。俺は人の心なんて読めないんだぜ?無茶言うなよな」
カァーっと、一気に何かが私を支配していく。
 それがなんなのか、正気を失っている私にはわかるわけない。
「もういい!タクなんかもう知らない!」
それだけ言い残して、その場をあとにした。
 喧嘩をした愛しいタクを、一人残して。
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