もっと、生きてほしかった……
「ただいま〜!」
誰もいない部屋にこだまする私の声。
後ろには荷物を持った海斗が疲れた顔で立っている。
「ありがと。
すぐ作るから、また寝てきたら?」
「今日はいい。」
あれ?
寝ないなんて珍しい…。
「そう?
なら、いいけど…。
じゃっ作ろっと!
ハンバーグハンバーグ……」
「俺、ここで美波が料理する所見てる。」
そう言ってテーブルに座り、腕を組んでそこに顔を乗せた状態でこっちを見る海斗。
………?
何か見られてるとやりにくいんだけどなぁ――。
「何かやりにくいよ…。
テレビでも見てきたら?」
「いい。
今日で最後かもしれねぇから……。
だから、美波の全部を目に焼き付けとこうと思って…。」
えっ……?
何、言ってるのよ…。
海斗の病気が治ったらまた帰ってこれるじゃない――。
「何、言ってるのよ。
病気が治ったらまた帰ってこれるじゃない。」
「もしかしたら帰ってこれねぇかもしんねぇから…。
だから、美波の仕草、声、姿。
それと俺が大好きなお前の笑顔――忘れねぇように……。
俺は今でも、これからもお前を愛してる。
だからこそ、俺の好きなお前でいてほしいから……。」
さっきから何言ってるの――?
海斗の病気は、絶対に治らないって決まった訳じゃないのに―――――
確かに先生には治らないって言われたよ?
でも私は信じてる……。
海斗の病気は必ず治るって………
治ったら結婚するんだって………
「な…に、言ってるの……?
また帰ってこれるよ?
次に帰ってきた時は結婚だってするじゃない……。
何バカなこと言ってるの……っ」
自分で言っときながら、私の頬には涙が伝っていた――。
信じたくない―――――
ココロではそう言ってるのに、体は正直だった…。
「美波……。
ゴメンな――?
弱い俺で、ゴメン………」