もっと、生きてほしかった……




驚いた。
いきなり鞄から海斗のケータイ出してきたから……。



でも、何でこんなものを昂が持ってるの?




「それ、海斗から預かってたんだ。

もし自分が死んだら、美波に渡してくれって。

何かムービーがどうとか言ってたけど――。」





ムービー……?


動画のこと、かな?


でも、何だろ………
このキモチ………

何だか、見るのが怖い気がする……。



「………さっ!
私たちは帰るよ〜!

じゃあね!美波!
明日、待ってるから!!」




………夏歩



「ありがと…っ
また行けたら、必ず行くから!」




そう言ってみんな帰っていった。



いつの間にか日は赤く染まっていて、夕方になっていた。



私の手には、しっかり海斗のケータイが握られていて………



今すぐにでも鳴り出しそうだった。



「帰ろう………」




家までの帰り道。


私は決して、ケータイを開かなかった。



勇気が出なかった。

開けると何かが変わりそうで………怖い。



「家に帰ってから、見よっかな……。」




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