月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
デパ地下
街中のうだるような暑さから一転、あたし日野麗美は冷房の効いた楽園(パラダイス)へ入った。
ここは銀座某老舗デパートの地下食品売り場。
いわゆるデパ地下。
楽園と呼ぶのは大袈裟かもしれないが、あいつにとっては楽園だろうな。
壁に貼られたポスターの「半熟スイーツ大特集」という文字を見ながら、あたしはそう思った。
探している人物はすぐに見つかった。
白いシャツにネクタイ。
黒のスラックスのポケットに両手を突っ込んでうつむいている。
いつもの憂いを含んだ瞳は、夕闇の摩天楼から下界を見つめて…はおらず、ショーケースの中の半熟スイーツたちを見ていた。
「半熟スイーツって色んな種類があるのね」
あたしはその人物の横に立った。
「レミ、どうしてここに?」
甘党の従弟、月見達郎は、ほんの少しだけ驚いた声を出した。
「梅谷さんに訊いたら、ここだって言うから」
達郎の家に長年通うお手伝いさんは、丁寧に教えてくれた。
ここは銀座某老舗デパートの地下食品売り場。
いわゆるデパ地下。
楽園と呼ぶのは大袈裟かもしれないが、あいつにとっては楽園だろうな。
壁に貼られたポスターの「半熟スイーツ大特集」という文字を見ながら、あたしはそう思った。
探している人物はすぐに見つかった。
白いシャツにネクタイ。
黒のスラックスのポケットに両手を突っ込んでうつむいている。
いつもの憂いを含んだ瞳は、夕闇の摩天楼から下界を見つめて…はおらず、ショーケースの中の半熟スイーツたちを見ていた。
「半熟スイーツって色んな種類があるのね」
あたしはその人物の横に立った。
「レミ、どうしてここに?」
甘党の従弟、月見達郎は、ほんの少しだけ驚いた声を出した。
「梅谷さんに訊いたら、ここだって言うから」
達郎の家に長年通うお手伝いさんは、丁寧に教えてくれた。
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