月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
一通り隙間をのぞいて、あと見てないのは押し入れだけとなりました。

あたしは襖に手をかけましたが、そこでふと思ったんです。

押し入れの中に本当に『誰か』がいたらって。

開けた途端に『誰か』に襲いかかられたらどうしようって…。

不思議ですね。

半ばむきになって探してたのに、そう考えたら途端に恐ろしくなってしまうなんて。

でもね、襖にかけた手を今さら引っ込めるわけにもいかなくなって、あたしはついに押し入れを開けたんです。

いち、にの、さんで。



…中には誰もいませんでした。

押し入れの上の段も、下の段もよく見たんですが、結果は同じです。

あたしはようやく我に返りました。

ずっと感じていた『誰か』の視線は気のせいだと、そう思ったんです。

なんか自分で自分が馬鹿らしくなったんですが、せっかく押し入れを開けたことだし、少し中の整理でもしようかと、改めて押し入れをのぞきこみました。

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