月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
今すぐ戻れ
「厚さ数ミリの女か…」
達郎は唇を尖らせた。
「都市伝説にあったな。数ミリの隙間に潜んでいて、目が合ったが最後、異次元に引きずり込まれてしまうとかいう話だ」
「なんでそんな話、知ってるのよ」
あたしはハンカチを取り出した。
手のひらが汗でびっしょりだったからだ。
「まぁ雑学の一種だ」
それにしても、と達郎は笑った。
「オバケ嫌いのレミが、よく最後まで話を聞いてられたな」
「仕事じゃなかったら聞いてなかったわよ」
思い出しただけでも背筋が冷たくなる。
けして店内の冷房のせいじゃない。
あの場に岸警部が戻ってきてくれなかったら、たぶん叫んでただろうな、あたし。
「それで、怪談話を聞かされて終わったのか?」
「警部が引きあげようってほのめかしてきたもんで」
大ウソ。
本当はあたしが警部をせかしたのだ。
何事もなかったかのように、淡々とあたしたちを見送った範子がまた不気味だった。
達郎は唇を尖らせた。
「都市伝説にあったな。数ミリの隙間に潜んでいて、目が合ったが最後、異次元に引きずり込まれてしまうとかいう話だ」
「なんでそんな話、知ってるのよ」
あたしはハンカチを取り出した。
手のひらが汗でびっしょりだったからだ。
「まぁ雑学の一種だ」
それにしても、と達郎は笑った。
「オバケ嫌いのレミが、よく最後まで話を聞いてられたな」
「仕事じゃなかったら聞いてなかったわよ」
思い出しただけでも背筋が冷たくなる。
けして店内の冷房のせいじゃない。
あの場に岸警部が戻ってきてくれなかったら、たぶん叫んでただろうな、あたし。
「それで、怪談話を聞かされて終わったのか?」
「警部が引きあげようってほのめかしてきたもんで」
大ウソ。
本当はあたしが警部をせかしたのだ。
何事もなかったかのように、淡々とあたしたちを見送った範子がまた不気味だった。