月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
このテの脅し文句で範子をつなぎ止めるぐらいのことはやるだろう。

「だとすると範子は、泉田を強い姿勢で告発できない立場にあるってことか…」

達郎は、妙な言い回しをした。

「どういう意味よ?」

「襲われたのは画廊だったよな」

質問には答えず、達郎は席を立った。

どこへ行くの、と訊こうとしたが、半熟プリンはテーブルの上に置きっ放し。

どうやら店を出る気はなさそうだ。

あたしは黙って待つ事にした。

やがて達郎は大量の新聞を抱えて戻ってきた。

大手5紙に加えて、スポーツ新聞もある。

店に置いてあった新聞を全て持ってきたらしい。

達郎はそれらを、テーブルの上に広げはじめた。

「ちょっとちょっと、達郎ってば!?」

あたしはアイスコーヒーのグラスと半熟プリンの箱をあわてて抱えた。

しかし達郎はあたしの抗議を無視して、次々と新聞を開いてゆく。

「事件のことを調べるの?」

達郎が開いたのは、全て社会面だった。

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