月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
「事件か?」
ショーケースの中に視線をロックしたまま、達郎は言った。
「仕事サボってデパ地下来るほど呑気じゃないわよ」
甘い物は嫌いじゃないけど、達郎ほど甘党ではない。
「聞いてほしい話があるの。ちょっと来てくれる?」
しかし達郎から返ってきたのは「ああ」という生返事。
あたしは小さなタメ息をついた。
「上の喫茶店で待ってるわ。選び終わったらでいいから早く来て」
達郎はショーケースを眺めながら、ひらひらと手を振った。
ええい、今度は返事すら無しかい。
身内の頼みより甘い物の方が大事…なんだよな、この男は。
長い付き合いで充分すぎるほどわかっていることを、あたしは今さらながら思い出していた。
ショーケースの中に視線をロックしたまま、達郎は言った。
「仕事サボってデパ地下来るほど呑気じゃないわよ」
甘い物は嫌いじゃないけど、達郎ほど甘党ではない。
「聞いてほしい話があるの。ちょっと来てくれる?」
しかし達郎から返ってきたのは「ああ」という生返事。
あたしは小さなタメ息をついた。
「上の喫茶店で待ってるわ。選び終わったらでいいから早く来て」
達郎はショーケースを眺めながら、ひらひらと手を振った。
ええい、今度は返事すら無しかい。
身内の頼みより甘い物の方が大事…なんだよな、この男は。
長い付き合いで充分すぎるほどわかっていることを、あたしは今さらながら思い出していた。