月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
「越沼さん、彼女を頼む!」

そう言うと星野警部補は階段を駆け上がった。

あたしが範子を介抱する越沼さんのもとにたどり着いたのはその5秒後。

ナイフで切りつけられた時にかばったのだろうか、範子の両腕は血まみれだった。

今にも消えそうなうめき声をあげ、ただでさえ悪かった顔色は真っ青になっていた。

幸い頭は打ってないらしく、意識はあるようだった。

あたしはこの場を越沼さんに任せ、階段を2段とばしで駆け上がった。

上では、星野警部補と泉田が対峙していた。

あたしから見て泉田が手前に、星野警部補が奥にいた。

泉田が振り回すナイフを星野警部補がかわして、そういう立ち位置になったのだろう。

つまりあたしと星野警部補とで、泉田を挟み込んだのだ。

泉田は、不意に現われたあたしを、血走った目で見た。

ナイフを振り上げて、そのままあたしに突っ込んできた。

「危ない!」

星野警部補の叫び声が聞こえた。

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