月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
何台ものパトカーが停まり、アパート周辺は騒然とした雰囲気になった。

この暑い中、大勢の野次馬が押しかけているのを窓から眺めながら、あたしは後ろを振り向いた。

範子の部屋の中も、外と同じく大勢の人がいる。

捜査員や鑑識官が現場検証を行っているからだ。

ストロボが光り、畳に落ちた範子の血痕がカメラに収められる。

病院からの連絡によると範子の命に別状はないらしい。

ただ、ひどいショックを受けたようで、今は薬で眠っているそうだ。

「レミ、そろそろいいか?」

愛用の黒い絹の手袋をはめながら達郎は言った。

達郎が立っているのは押し入れの前。

範子が『誰か』と目が合ったという押し入れだ。

「その押し入れで日野が幽霊を見たって言うんだな?」

「見たのは若松範子です!」

あたしは星野警部補の発言をあわてて訂正した。

「そうか…」

越沼さんが腕組みをしてウームと唸る。

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