月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
「岸警部が日野の様子がおかしいと言ってたが、幽霊を見たせいだったのか」

「ちょ、ちょっと、越沼さん!?」

何やら視線を感じたので周囲を見渡すと、所轄の捜査員や鑑識官らが、全員あたしを好奇の目で見ていた。

「あたしは幽霊なんか見ていません!」

必死に訴えたが、どこまで伝わったやら。

【警視庁の日野巡査は幽霊を見たそうだ】

こんなこっぱずかしい噂が広まらないことを願うのみ。

「あの…いいですか?」

「あ、ゴメン達郎くん。もう構わないよ」

やけにあっさりとした星野警部補の返事にうなずくと、達郎は躊躇なく押し入れの襖を開けた。

鑑識官のひとりからペンライトを借り、範子が『誰か』を見たという襖と襖の間を照らす。

あたしは固唾を飲んでその様子を見守った。

星野警部補たちも、達郎の一挙一動に目を凝らしていた。

やがて達郎は、押し入れに体を突っ込むと、そのまま手前の襖を半分ほど閉めた。

「あー、いたいた」

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