月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
不意にあがった達郎の声に、あたしをはじめとする全員の目が押し入れに集中する。

「暑ーっ…」

汗を拭きながら押し入れから出てきた達郎は、あたしたちの視線を気にしようともせず、手前の襖に手をかけた。

両手で襖を持ち、上下にガタガタ揺らすと、襖は簡単に外れた。

達郎はそのまま体を反転させ、襖の裏側をあたしたちに見せた。

「これが、若松範子が見たという女の正体です」

達郎の言葉通り、襖の裏側には、確かに『女』がいた。

正確に言うと【女の絵】が、襖の裏側にテープで【貼って】あった。

「その絵…!」

星野警部補が、目を丸くしながら指さした。

あたしは捜査資料の中にあった一枚の絵を思い出した。

その絵は、泉田が目黒の画廊から盗んだものだった。

「おそらく泉田は、絵を売りさばくまで、ここに貼り付けて隠しておくつもりだったんでしょう」

「それを範子が幽霊かなんかと見間違えたってわけ?」

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