月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
「いや、それは違う」

襖を壁にたてかけながら、達郎は首を振った。

「おそらく範子はこの絵の存在をレミに教えたかったんだ」

「どどどどういう事!?」

『【ど】が多すぎ』

達郎と星野警部補、越沼さんの3人がかりでツッコミを食らった。

ポカンとするその他の捜査員を尻目に、達郎は言葉を続ける。

「範子は愛人にも関わらず、泉田をかばおうともしなかった。たぶん2人の仲は冷えきっていたんだろう」

それは聞き込みの時の態度からも明らかだ。

「だから範子はこの絵で泉田を逮捕させようとしていたんだ」

「証拠の在処を教えようとしてたのか」

星野警部補が右拳で左手の平を叩いた。

泉田を強盗事件の容疑者とする材料は、画廊の防犯カメラの映像のみ。

多くの前科を持つ泉田のような悪党であれば、カメラの映像を「他人の空似」と言って容疑を否認する可能性もある。

しかし証拠品を突き付ければ、犯行を認めさせることは容易だ。

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