月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
泉田が自分のもとに身を寄せている事。

もうすぐここに戻る事。

それらを警察に告げたと、淡々と語る範子に対して泉田は激怒し、ナイフで範子に襲いかかった。

「範子は絵の存在を知っていたのか?」

岸警部の問い掛けに泉田は首を振った。

「あいつに絵の事は一言も言ってない。絵を隠したのはあいつが仕事に行ってる時だった」

泉田の供述に、あたしたちは首をひねった。



あたしは盗まれた絵についても調べてみた。

さる日本の洋画家が、欧州へ留学した際に、現地の女性を描いたものだという。

絵は高い評価は受けているが、絵自体が何かいわく付きというわけではなかった。

その事を話すと、達郎は

「【ドリアン=グレイの肖像】みたいなエピソードが付いてたら面白かったんだけどな」

と言った。

しかしあたしが

「ドリアンってあの臭い果物?」

と訊くと、達郎はただ苦笑するばかりで、それ以降この事件に興味を持とうとしなかった。

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