月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
何はともあれ、事件は解決した。

絵は戻り、泉田浩は近い内に塀の中へ再び送られるだろう。

若松範子は無事回復して先日退院した。

お世話になりましたと、菓子折りを持って捜査一課を訪ねてきた範子には、事件当日に見た陰りはどこにもなかった。

泣きぼくろが印象的なその顔には、生気が戻っていた。

あの日の範子には何かが取り憑いていたんじゃないか?

あたしはそう思ったが、口には出さなかった。



あたしは最近、隙間を見ないようにする癖がついた。

それでも部屋に1人でいる時なんかは、どうしても隙間をのぞきたくなる衝動に駆られる。

でもいつも、寸前でこらえている。



だって、もしそこに『誰か』がいたら、貴方はどうする?



『隙間女の視線』

END
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