この命、あなたにあげます
何度も忘れようと思った…。
だけど、忘れられたことなんて、一度だってなかった…。
その日、私は無事学校を終えて、病院へと向かった。
「先生来たよ。」
「あぁ、佐奈ちゃん。先に検査室行ってて。」
「はい。」
私は先生に言われたとおり、検査室へと向かった。
私が入ると、入れ違いに男の人が出てきた。
「ねぇ!君、何かの病気?」
この時、なぜか今聞かなきゃいけない気がして、私は男の人を呼び止めた。
「私、藤谷佐奈!君は?」
「俺は、谷本春喜。」
聞いた途端、固まった。
谷本春喜って、私の隣の席の人…だよね?
「春喜君って、今高校一年生だよね?」
「何で知ってんの?」
「たぶん、私達同じクラスで席隣同士だよ。」
「ふーん。」
「で、春喜君は何かの病気?」
「うん。俺は、心臓病。お前は?」
「私はね…、何の病気か分からないんだ。」
「は?」
やっぱり、そうなるよね。
私だって、初めはそうなったもん。しかたない。
「まだ知られてない病気でね、治療法もないんだ。」
「そうか…。俺は、もうすぐ移植しなくちゃいけないって言われた。」
「そうなんだ…。」
「あっヤベ!俺そろそろ行くわ。また明日、学校でな。」
「うん。バイバイ。」
少し素っ気なくて…
でも、本当はすごく優しい人。
それに…………
とても笑顔の素晴らしい人だった。