engage−あの日の約束



「また、泣いてる」




あっ……と、思ってももう遅い。



先輩の手に顔を両方から支えられ、わたしは顔を下に向けることも、ごまかすこともできなかった。





「あ、の………これは………」



今さらなんて言えばいい?


別れたくないって言うべき?



でも、そんなわがまま…………言えない。





「ごめ…ん、なさい」






どうすればいいのか、わからない。





「なんで謝るの?」





わたしの涙を掬いながら、先輩は言った。




「だって………っ勝手に、勘違…いして、勝手、に泣いて………先輩っを、困らして…………」



「勘違いって?」



…………



い、言えないです…………




わたしが黙り込んで俯いていると、顔を両側から優しく挟まれ上を向かされた。











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