engage−あの日の約束
「何だか、初めて会った気がしないです」
「偶然……。俺もだよ」
二人は少しだけ世間話をしていた。
そのあと、お兄ちゃんは…
「妹を…頼みます…」
先輩に背を向けて言った。
その背中が悲しそうに見えた。
お兄ちゃん……?
「お兄さん、今、大学生?」
「うん、そうだよ。三年生……
家を出て一人暮らししてるんだ」
先輩は、「そっか…」とだけ言って、またわたしの手を握り、歩き始めた。
わたしは、この時気がつかなかった。
お兄ちゃんと先輩の会話に……意味があったなんて………