合縁奇縁~それでも愛は勝つ
あたしは太一の妻でも何でもない。
只、彼の子を生んだ愛人なんだ。
太一に代わってお礼を言うなんて、おこがましいよ。
「村井さんは、天野さんのこと、すっごく愛していたんだろうなぁ。
あの写真を見ればわかりますよ、彼がどんなに愛に溢れた人だったかって」
「え……」
笑顔でそう返されて、あたしは堪え切れなくなった涙を両手で隠した。
「天野さん?」
「そんな風に言われたの、初めてで……
自分では納得して、わかってるつもりだったけど、
嬉しい……」
「おい、母さんを泣かすなよ」
怖い顔をした雄太があたしと努先生の間に立ちはだかって、
「なかすなよぉ」
雄輝があたしの肩に縋りついてきた。
「ごめん、ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ。
許してくれよ」
頭を掻きながら園児室を後にした彼の背中が、こみ上げる熱い涙で滲んでぼやけた。