合縁奇縁~それでも愛は勝つ
あたしは以前にも増して、仕事に打ち込んだ。
土日出社も夜勤も、積極的に手を挙げて、できるだけ自分から考える時間を奪った。
そうしないと、寂しさで押しつぶされてしまいそうだった。
疲れて、ボロボロになって横になると、ようやく深い眠りにつくことができたんだ。
そんなある日、朝の食卓に一枚の紙が乗っていた。
『進路希望調査』
そうか、雄太も三年、もう進路を決める時期なんだなぁ、とため息をついた。
どれどれ……
と、いくつかの空欄を残し、角ばった太い字で埋められた用紙を覗きこんだ。
――えっ? 就職希望?
決意を込めたような大きな字で書かれたそれは、雄太の字に間違いはない。
何度見直しても、その文字は変わらない。
――何で?
と、あたしは自分に問うてみる。
今、我が家は雄太が働かないと困るような経済状態にある訳ではない。
太一の残した印税は、そのまま雄太の進学資金にと貯めてある。
そのことだって、雄太は知っている筈なのだ。
あたしは何が何だかわからなかった。