合縁奇縁~それでも愛は勝つ
暫くして、太一の写真集が発表された。
と言ってもそれは、共同通信社のイラク特集シリーズとしての一環。
通信社としての立場上、それは多角的視野をもった中立な写真集で、評判も賛否両論だった。
そしてその後、すぐ、太一は会社を辞めてフリーになる。
これからが、本当の太一のやりたい戦場写真家としての仕事になるのだと思った。
学生時代から夢を語っていた太一。
平和ボケの日本に生まれ、命の尊さに鈍感になる自分が嫌だと語っていた太一。
地球規模で未だ行われている、戦争と言う名の殺戮に止めをさしたいと、熱く語っていた太一。
あなたが夢を追いかけていることは、あたしの誇り。
あたしも、この日本で、あなたに貰った愛しい命を大切に育んでいるよ。
少しは誉めてほしいな。
そんなことを考えながら、三年後の再会を半信半疑で待ちわび、あたしは日々の雑事に追われていた。