合縁奇縁~それでも愛は勝つ
縋るところが一つ在るとすれば、それは坂本弁護士だった。
もしかしたら、彼は雄太から何か相談を受けているかもしれなかった。
自分の父親を知る唯一の知人が彼であり、父の遺言執行人である訳だし。
月に一度、決まって現れる律儀な彼のことを、雄太も信用し打ち解けているように見えたから。
あたしは早速、携帯を開き、坂本弁護士を呼び出した。
「あ、坂本さん?
あの……、雄太のことでご相談したいことがあるんですが……
ええ、そうなんです、雄太も三年で、そろそろ……
ええ、じゃぁ、四時に事務所下の喫茶店で」
坂本は、予期していたようにあたしの呼び出しにすぐさま応じてくれた。
雄太の前では聞きにくいし、次の訪問予定まで、まだ一週間ある。
今日は久々の非番だが、仕方ない。
ことは急いていたのだ。
だるい身体に鞭打って、朝食の皿を洗って、洗濯物を片付けにかかった。
坂本の事務所まで片道子一時間。
三時には家を出ないといけない計算だ。
あたしは心を無にして、手を動かした。