合縁奇縁~それでも愛は勝つ

縋るところが一つ在るとすれば、それは坂本弁護士だった。

もしかしたら、彼は雄太から何か相談を受けているかもしれなかった。

自分の父親を知る唯一の知人が彼であり、父の遺言執行人である訳だし。

月に一度、決まって現れる律儀な彼のことを、雄太も信用し打ち解けているように見えたから。


あたしは早速、携帯を開き、坂本弁護士を呼び出した。


「あ、坂本さん?

あの……、雄太のことでご相談したいことがあるんですが……

ええ、そうなんです、雄太も三年で、そろそろ……

ええ、じゃぁ、四時に事務所下の喫茶店で」


坂本は、予期していたようにあたしの呼び出しにすぐさま応じてくれた。

雄太の前では聞きにくいし、次の訪問予定まで、まだ一週間ある。

今日は久々の非番だが、仕方ない。


ことは急いていたのだ。


だるい身体に鞭打って、朝食の皿を洗って、洗濯物を片付けにかかった。

坂本の事務所まで片道子一時間。

三時には家を出ないといけない計算だ。


あたしは心を無にして、手を動かした。
< 110 / 231 >

この作品をシェア

pagetop