合縁奇縁~それでも愛は勝つ
息せき切って店に飛び込むと、カウンターに座っていた坂本が顔を上げた。
「慌てているのは、身体だけかな?」
そう意地悪そうに笑う顔を睨みつけた。
「知ってることがあるなら、早く教えて下さい」
「それは、雄太くんが就職希望だ、って話?」
やっぱり、って思った。
きっとあたしの顔は、更に険しく鬼の形相になっていたに違いない。
「なんであなたが知ってて、あたしが知らないんでしょう?
もしかして雄太と何か話を?」
「君は、何か誤解してるんじゃないかな?
僕は、彼から進学希望を就職希望に変えたいと相談を受けただけだけど。
僕の方こそ、聞きたいな、何で彼が就職を希望しているのか」
「それが判らないから、あたしがここにいるんじゃない!」
思わず声を荒げて立ち上がった。
握り締めた拳が宙に浮く。
この苛立ちを、何処にぶつけたらいいのか分からなかった……