合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「俺は、中学出たら、働いて自立する。
そしたら、母さんは、雄輝を連れて再婚すればいい」
まさか、雄太の口から、そんな言葉が出てくるとは想像もしていなかった。
進路の話を持ち出したあたしに、雄太は戸惑うことなくそう答えた。
「俺がいると、母さんは、三年寝太郎を思い出すだろ?
母さん、まだ若いんだし、結婚して楽になればいい」
「雄太、結婚って、相手がいるもんなんだよ」
「相手ならいくらでもいるだろ?
坂本の叔父さんだって、喜んで貰ってくれるよ」
「雄太、それはないよ。
彼は結婚はしない主義なの。
彼は犯罪を犯した人の弁護もやっていて、それは危険と隣り合わせの仕事だから。
家族を巻き込みたくないから結婚はしない、って決めてるんだよ」
「えっ、そうなの?」
あんまり驚いた顔をするものだから、何だか少し安心した。
偉そうなこと言っても、まだまだ子供だ。
大人の複雑な事情がわかる筈もない。