合縁奇縁~それでも愛は勝つ

雄太の携帯を呼び出し、雄輝を連れて公園に来るよう強制命令。

「えぇ~、俺、午後から出かけるつもりだったんだけど。

マジ、面倒くせぇ~

俺、食ったら直ぐバックレルからな」

「ハイハイ、兎に角、連れて来て」

案の定、他人と打ち解けない雄太はブーーブーで、機嫌が悪かった。

ましてや、家族揃ってピクニック、なんてシチュエーションじゃ雄太の肩身も狭いだろうしなぁ~

勿論、あたしも、だけど。


きっと、あたしの顔は暗かった。

決して、楽しそうではなかったと思う。

「無理やり誘っちゃったみたいで悪いけど、わたし、どうしても天野さんと知り合いになりたかったの」

携帯を閉じて、黙々と歩いていたあたしに、木村さんがそう言った。

まるで、子供が、「友達になって」なんて気軽にそう言うみたいに。

「えっ? どうしてですか?

あっ、もしかして、雄輝が祐樹ちゃんに何か?

あの子、上がいて口も達者だから、なんか無理強いしちゃったりしてますか?」

「そうじゃなくて……、わたしは、あなた、の方に興味があって」

「へっ?」


にっこり笑った、その笑顔は、まるで母のように大らかだったのだけれど。

あたしには訳がわからなかった。


「その歳で二人の子持ちで、未婚の母で。

周りは色々噂してるみたいだけど、わたしは人の話は信用しない主義なの。

自分で直接聞いて確かめないとね。

興味本位の好奇心じゃないのよ。

最近のあなた、凄く疲れてるみたいだし、何か少しでもわたしでお役に立てることがあればって思ったの」

「噂?」

「う~ん、例えば、あなたがその筋の怖ぁい人の妾だとか」

「まさか?!」

「二人の子は実子じゃなくて、腹違いの兄妹だとか」

「まさか?!」

「やっぱりね、人の噂は信用できない」



そう言って、裕子さんは大きな声で笑ったんだ。
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