合縁奇縁~それでも愛は勝つ
そんなあたしの窮地を救ってくれたのが、雄輝の父親だったんです。
彼は会社の上司で、妻帯者でした。
それでも、あたしは一人が怖かった。
誰かに縋りつきたかったんです。
そして雄輝を身ごもって、生むと決心したあたしは捨てられました。
当然ですよね。
同じ職場の不倫相手が自分の子を生む、なんて状況、普通の神経だったら受け入れられる筈がない。
でも、あたし、生むことしか考えられなかった。
仮にも愛した人の子供でしょ。
あたしに与えられた授かりものですもの。
職を失ったあたしは、生きるのに必死でした。
子育てと生活、両方担うのは本当に大変で。
でもそれでも幸運に恵まれて、なんとかここまでやってきたんです。
今の職場も、コンビニでバイトしてた時のコンビニ強盗撃退の実績を買われて、正社員になれたんです。
警備会社の勤務は不規則で、夜勤もあるので体力的にはきついんですけど、時給八百五十円のバイトの稼ぎじゃ、家賃払うので精一杯だし、勿論保育園には入れないし。
感謝してます。
でも……」
「美樹さん……、あんた偉いっ!
尊敬するよ、女として、いえ、人間として」
つい夢中で人生を語ってしまったあたしだったけど、見ると周りの三人は皆、目に涙を薄っすら浮かべてじっとあたしの話を聞いていてくれたみたい。