合縁奇縁~それでも愛は勝つ
貧困の連鎖、なんて言葉が流行る今日この頃。
当然、生活に汲々の我が家には、雄太を塾に通わせる余裕は無い。
受験を控え、一人取り残された気持ちでいたのは他ならない雄太だったのかもしれない。
「勉強なら俺が教えてやる。お前にやる気があるならな」
その言葉に雄太は素直に従ったのだ。
「樹も凄く嬉しそう。
こんな弟が欲しかった、なんて、雄太くんから連絡来た日は飛んで帰ってくる。
まあ、今は建設不況で残業もないんだけどね」
そうやって、あたしの生活に新しい要素が加わって、少しの変化が生まれた。
でも、そう簡単には心の糸の張りは緩められない。
あたしの心の隙間は埋まらない。
肝心な想いは閉じ込められたまま。
それは……
ある意味、パンドラの箱。
開けたら戻せない、欲望という名の魔物。
まさか……
単なる、あたしの片想いだ。
口にしたとて、どうなるものでもあるまいし、笑って冗談で済まされるのが落ちだ。
あたしは想いを封じ込めた。