合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「ねえ、美樹さん、……だったわよね?」
「はい?」
「もう、どうしたの?
さっきから上の空だけど」
「ああ、ごめんなさい。
昨晩、あまり寝てないもので、眠くて……」
「ほら、この間の話。
美樹さんが昔、商社で貿易事務してたって話よ」
「……ええ、大学卒業してから、雄輝を身ごもるまで、穀物関係の貿易事務をしてました」
「へぇ~
それが何で、今は警備会社勤めなの?」
樹さんは、軽い気持ちで聞いたのだろうけれど、その疑問には簡単には答えられないし。
そっか、この間は、樹さん子守番でいなかったっけ。
「話せば長くなるんで……」と、お茶を濁そうとしたのだけれど……
「いや、なら尚更、是非聞きたいな」
樹さんの視線を一身に集めて、あたしは少し身構えた。
裕子さんを見ると、何やら可笑しそうに笑っている。
仕方ない……
あたしは、思い切って、波乱万丈の人生劇を、面白可笑しく語り始めた。