合縁奇縁~それでも愛は勝つ


「って……そう言うことじゃないんです!

あたしは、雄輝に、父親が居ない現実をきちんと受け止めて欲しいんです。

いくら、つとむ先生が雄輝に優しくしてくださっても、その関係は卒園すれば終わりです。

むしろ、きちんと、他の子供と分け隔てなく接して頂きたい。

幻想であれ、雄輝に期待を持たせるようなことはさせたくないんです!」


思わず立ち上がったあたしは、拳に力を籠め、熱く語っていた。


それは、雄輝への叱咤と共に、あたし自身への戒めでもあったのだ。


「あ……えっと……

天野さんの仰りたいことは分かりました。

でも、少し考えさせてください。

僕なりに考えてみたいんです。

じゃ、次、木村さんどうぞ……」


そう言って、あたしの思いをスルリとかわした村瀬努は、一筋縄ではいかない、頑固な心持の男らしい。
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