合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「家族が増えて、静かだった家の中が賑やかになって、忙しい両親もそれなりに幸せそうで、その頃が一番楽しかったって。
それが、彼が大学四年になろうとしていた春、突然消えてしまったの」
「園長先生?
なんで、そんな話をあたしに?」
努先生の家庭の事情なんて、あたしに聞く権利があるのだろうか?
興味以前に、あたしの頭を過ぎったのはそれで。
「たぶん彼は、雄輝ちゃんの気持ちをとても良くわかっていると思うの。
小さいながらも、幸せな家族の形を求める、あの子の気持ちを。
たとえ、それが幻想であろうとも、それを求めずに居られない気持ちを、ね……」
園長先生の瞳は、園庭遥か向こうで子供達と戯れる、努先生に注がれていた。
あたしは、自分勝手な思い込みが、雄輝だけでなく、努先生をも傷つけているんじゃないかという不安に襲われた。