合縁奇縁~それでも愛は勝つ
あたしは思いつく考えもなしに、いつもの公園の原っぱに、自転車を漕ぎ入れた。
平日の朝、八時前。
公園には、犬の散歩をする老人の姿がチラホラあるだけだ。
あたしは、自転車を止め、大きく伸びをすると、その原っぱの真ん中、草原の上に、大の字になって寝転んだ。
真っ青な空に、白い雲が浮かんでいる。
寝転んで見上げた空は、いつもよりもずっと大きくて、すっぽりあたしの全てを包んでくれた。
遥か彼方の上空で、風に押され、形を変えて進む雲。
――嗚呼、何時だったか、こんな風に空を見上げたことがあったっけ……
それが、母との思い出なのか、太一との思い出なのか、今はもうどちらとも思い出せなくて……
幸せな思い出は、繋がっているのかな?
なんて、勝手なことを思ってみたりして。
目を閉じれば、瞼に浮かぶ、大好きだった人たちの顔。
あたしには、愛されていた思い出がある。
そう思い出しただけで力が湧いてきた。
――そうだ、懐かしの映画でも観てみようかなぁ~
あたしは、あまりの気持ちよさに、そのまま風に吹かれ、草原のど真ん中で幸せな眠りに落ちていった。