合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「あたしいつの間にか、眠ってしまって……
きゃぁ~、もう十時じゃない!」
なんと、二時間近くも眠っていたなんて。
すっぴんのあたしの顔の上に、燦々と降り注ぐ太陽が眩しい。
――不味い、日に焼けた!
あたしは火照る頬に手を当て、身を起こした。
「ご、ご心配おかけ致しました」
「僕、鈴木隆(スズキタカシ)、この公園には、よく散歩に来るんだ。
君の顔は何度か見かけたことがある。
これも何かの縁だね、どうかお見知りおきを」
差し出された手を、反射的に握り返した。
「あたしは、天野美樹。どうぞ宜しく」
「じゃ、僕はこれで。
この後、仕事があるんでね。
顔、早く手当てした方がいいよ。
海に行ったみたいに真っ赤だ」
彼はそういい残し、小走りで愛犬ユメと一緒に去って行った。
その後ろ姿は、精悍で美しい。
――今のは何だったの?
去り行く後姿が見えなくなって、今更のように、胸がドキンと小さく跳ねた。